はじめに
物理が伸びない人には、はっきりした共通点があります。公式は全部言えるのに、問題を前にすると手が止まるのです。原因は覚えている量ではありません。物理で本当に必要な法則は、運動方程式、力学的エネルギー保存、運動量保存、ガウスの法則、キルヒホッフの法則……と数えても20個程度です。足りないのは、目の前の現象をどの法則で切るかという判断です。
最初に身につけるべき技術は、図を描くことです
力学なら、物体に働く力の矢印を全部描くことから始めます。重力、垂直抗力、張力、摩擦力、そして加速する座標系なら慣性力。描き漏らした力が、そのまま失点になります。電磁気なら、複雑な回路を等価な形に描き直す。波動なら、波の形と進行方向を描く。
図が正確に描ければ、式はほとんど自動的に出てきます。逆に、図を描かずにいきなり式を書き始める人は、必ずどこかで詰まります。答案上でも図は評価されますから、練習段階から必ず描く癖をつけてください。
力学 → 電磁気 → 波動・熱 → 原子の順で積む
力学は全分野の土台です。電磁気の荷電粒子の運動は、力の正体が電気力に変わっただけで中身は力学ですし、交流回路も単振動と同じ数学です。力学の運動方程式が自在に立てられないうちに電磁気へ進むと、まず崩れます。
波動と熱力学は独立性が高いので、時期をずらしても構いません。原子分野は最後で十分ですが、量は少ないので直前期でも間に合います。むしろ手を付けずに本番を迎える人が多い分野なので、確実に取っておきたいところです。
微積分と、上位向けの参考書について
微積分を使うかどうかは、必須ではありません。ただ、v-tグラフの面積が変位になること、単振動の運動方程式がなぜあの形なのか、といった場面では、微積の言葉で理解したほうが腑に落ちます。数学IIIが進んでいるなら、理解の補助として使う価値はあります。
一方で、教科書レベルで詰まっている段階で『新・物理入門』のような本に手を出すのは事故のもとです。『難問題の系統とその解き方』も同様で、標準的な問題集を8割方仕上げてから、旧帝大・単科医科大クラスを狙う人が使う本だと考えてください。