はじめに
最難関の理科というと、見たこともない難問を解く力が必要だと思われがちです。実際は逆です。合格者を分けているのは、標準的な問題を全部拾えるかどうか。特に医学部では、この傾向がはっきりしています。
合格ラインは満点ではなく「安定」です
多くの医学部の理科は、標準からやや難の問題が並びます。合格者の得点は8割前後に集まり、満点近くを取る必要はありません。必要なのは、9割を狙う勉強ではなく、5割の日を作らない勉強です。
実際に失点を分解すると、難問が解けなかったことによる失点より、計算ミス、単位の書き落とし、設問の読み違い、時間切れによる失点のほうが大きくなります。ここを潰す作業は地味ですが、最も費用対効果が高い部分です。演習のたびに失点を種類別に記録し、同じ種類のミスが3回続いたら、それを潰す練習だけを1週間やる。この繰り返しです。
理科2科目150分をどう割るか
多くの国公立医学部は、理科2科目で150分の一括方式です。単純に割れば1科目75分ですが、実際は「得意科目を70分以内で終え、余りを苦手科目に回す」という設計をしておきます。
開始から10分は、解かずに全問に目を通す時間に充ててください。そのうえで、すぐ解ける問題、時間はかかるが確実に取れる問題、捨てる問題の3つに仕分けます。慣れている受験生ほど、捨てる問題を早い段階で決めています。化学は分量が多く時間を食いやすいので、先に化学を処理してから物理や生物に移る人が多い、というのも覚えておくと役に立ちます。
選択科目による戦略の違いもあります。物理・化学は上限が高く、噛み合えば2科目とも9割を超えます。反面、物理は設定を1つ読み違えると大問がまるごと飛ぶ事故のリスクがある。化学・生物は得点が安定しますが、生物の論述に時間を取られ、9割が出にくく時間切れの危険が高い。書く速度そのものが実力の一部になります。どちらでも合格者は出ますから、高3の途中で乗り換えないことが何より重要です。
東大・京大は「全部は解かない」前提で
東大の理科は2科目150分、大問は合計6題。すべてを丁寧に解き切る時間は与えられていません。京大も同様に、量と難度の両面で完答は想定されていません。合格者の答案にも空欄はあります。
ですから、演習の目的が変わります。「全部解けるようにする」のではなく、「どれを解かないかを短時間で判断する」練習をする。過去問を解くときは必ず本番と同じ時間で通し、終わったあとに「どの問題を捨てるべきだったか」を検討してください。この振り返りが、そのまま本番の得点になります。