物理の参考書はどう組むか — エッセンス・良問の風・名問の森と、その代替ルート
物理は「わかる」と「解ける」の差が大きい科目です。教科書を読んで納得しても、問題を前にすると手が動かない。だから物理の参考書は、現象を理解する本と解き方を身につける本を組み合わせて使います。この記事では代表的な組み方を整理します。
物理の教材は3種類ある
- 講義系 — 現象の意味と、なぜその式になるのかを説明する本。読む本です。
- 傍用問題集 — 学校で配られるセミナーやリードαなど。基本問題を大量に扱います。
- 入試用問題集 — 入試レベルの問題を解く本。良問の風や名問の森などです。
物理でつまずく人の多くは、講義系を飛ばして問題集から入っています。物理は公式の暗記では解けません。どういう状況で、どの法則が使えるかを判断する必要があり、その判断は現象の理解から来ます。
定番:エッセンス → 良問の風 → 名問の森
河合出版の 3 段構成は、物理の参考書ルートとして最も知られた並びです。
| 参考書 | 難易度 | 到達目安 | 問題数 | 想定時間 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|---|
| 物理のエッセンス 力学・波動 | 4 / 10 | 45〜60 | 例題+問題 約200題 | 30〜40h | 教科書レベルを終え入試物理を本格的に始める受験生 |
| 良問の風 | 5 / 10 | 52〜62 | 約150題 | 40〜50h | エッセンスを終えて標準演習に進む受験生 |
| 名問の森 力学・熱・波動I | 7 / 10 | 60〜70 | 約70題 | 40〜50h | 良問の風を終えて難関大を目指す受験生 |
物理のエッセンスは、講義と問題演習を兼ねた本です。現象の説明が簡潔で、独学だと厳しいと感じる人もいます。ただしここを乗り越えると、良問の風・名問の森と同じ著者の解法で一貫して進められる利点があります。
注意すべきはエッセンスの難易度です。「エッセンス=入門書」と思われがちですが、到達目安を見れば分かるとおり、教科書レベルが終わっている前提の本です。物理が初学、または苦手という段階でいきなり開くと止まります。
エッセンスで止まったら
エッセンスで止まった場合、それは能力の問題ではなく順序の問題です。講義系を 1 冊挟んでから戻ると進むようになります。
代替:講義系から入るルート
エッセンスの前に、あるいはエッセンスの代わりに講義系を使う組み方があります。
| 参考書 | 難易度 | 到達目安 | 問題数 | 想定時間 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|---|
| 橋元の物理をはじめからていねいに 力学編 | 2 / 10 | 40〜52 | 講義+例題 約80題 | 20〜30h | 物理の最初の一歩でつまずいている高2〜高3 |
| 漆原晃の物理 面白いほど 力学・熱力学 | 3 / 10 | 42〜58 | 講義+例題 約120題 | 25〜35h | ゼロから入試標準レベルまで独学で進めたい受験生 |
| 秘伝の物理講義 力学・波動 | 3 / 10 | 45〜60 | 講義+例題 約80題 | 30〜40h | 動画を併用して物理を基礎から固めたい独学者 |
| 宇宙一わかりやすい高校物理 力学・波動 | 1 / 10 | 〜50 | 講義+確認問題 約100題 | 20〜30h | 物理を初めて学ぶ高1〜高2、物理が苦手な高3 |
宇宙一わかりやすい高校物理と橋元の物理をはじめからていねいには、物理が初学・苦手な段階から読める導入書です。イラストとたとえ話を多用し、「何が起きているか」のイメージを作ることを優先します。
漆原晃の物理 面白いほどと秘伝の物理講義は、もう少し踏み込んで解法まで扱います。講義系のあと、同じ著者の問題集に接続できる点が利点です。
講義系は分野別に分冊されていることが多いので、力学から順に進めてください。力学は他分野の土台になるので、ここを飛ばさないことが重要です。
学校の傍用問題集をどう使うか
| 参考書 | 難易度 | 到達目安 | 問題数 | 想定時間 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|---|
| セミナー物理基礎+物理 | 3 / 10 | 42〜58 | 約600題 | 60〜90h | 学校で配布され定期テストから入試基礎まで固めたい高校生 |
| リードα 物理基礎・物理 | 3 / 10 | 42〜58 | 約600題 | 60〜90h | 学校で配布されて基礎固めに使う高校生 |
| エクセル物理 総合版 | 3 / 10 | 42〜58 | 約600題 | 60〜90h | 学校でエクセルを配布された高校生 |
セミナー物理基礎+物理やリードαは、学校で配られることが多い傍用問題集です。問題数が多く、基本レベルを網羅しています。
配られているなら、それを入試基礎の演習として使えます。市販の基礎問題集を別に買う必要はありません。ただし、解答が配られていない場合は独学に使えないので、その場合は市販の物理 基礎問題精講などに切り替えます。
傍用問題集は基本問題と応用問題が混在しています。まず基本問題(A 問題など)を全分野終わらせてから、応用に入るほうが全体像を早く掴めます。
志望校別にどこまでやるか
- 共通テストのみ — 講義系 1 冊 + 傍用問題集の基本レベルで足ります。入試用問題集は不要な場合が多いです。
- 中堅〜MARCH・地方国公立 — 講義系 → 良問の風または物理重要問題集の A 問題まで。
- 旧帝大・早慶 — 名問の森または重要問題集の B 問題まで。
- 最難関・医学部 — 名問の森のあと、物理 標準問題精講や難問題の系統とその解き方に進む場合があります。ただし過去問の時間を削らないことが前提です。
物理は問題のパターンが他科目より限定的で、正しい順序で積めば安定しやすい科目です。逆に、順序を飛ばすと途中で完全に手が止まります。急がば回れが効きやすい科目だと考えてください。